インタビュー

営業職から一転、介護業界へ!熱血介護リーダーに聞いた看多機で働く3つのメリットと介護への思い

東京都品川区にある看護小規模多機能型居宅介護「杜松倶楽部(としょうくらぶ)」。
前々回の記事では、杜松倶楽部のサービスなどを紹介し、前回の記事では、所長の田村さんに看多機ができることなどをお伺いしました。

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この記事では、杜松倶楽部の介護リーダー・福田勇輔(ふくだ ゆうすけ)さんに普段の仕事内容や看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)で働き始めたきっかけなどをお伺いしました。

看多機で働いた経験がない人や看多機で働いてみたい人は、ぜひご一読を!

「通所」「宿泊」「訪問介護」の3サービスをこなす!看多機の介護職の仕事とは

___看多機の介護職の仕事内容を教えてください。

福田勇輔(以下、福田):看多機は「通所」「宿泊」「訪問介護」「訪問看護」の4つのサービスを提供しているため、介護職は「訪問看護」以外の3つの仕事をします。
「日勤」と「遅番」が通所と訪問介護の利用者さんを対応し、「夜勤」が宿泊の利用者さんを対応します。

___どのように仕事の割り振りをするのですか?

福田:日勤帯では、日勤リーダーという日直さんみたいな人がいます。その人が訪問介護などの担当を割り振りますが、その日の状況によって変更することもよくあります
というのも、送迎に行って、利用者さんに「どうしても行きたくない」と言われたら、無理に連れていく必要はないですよね。そういうときは、「では、あらためてまたお伺いします」と伝えて、訪問介護に切り替えます。
通所予定の利用者さんに来てもらえなかったとき、デイサービスだったらそこでサービスが終了しますが、看多機では訪問介護に切り替えられるのでサービスが終わりません。
いろいろな状況に対応できるのが看多機の魅力だと思います。

夜勤は、だいたい週1回、月4回程度で、あらかじめシフトで決まっています。
宿泊の定員は5名。人数が少ない分、「温かい飲み物が飲みたい」「もう少し起きていたい」などできるだけ利用者さんのニーズに応えられるようにしています。

___よくある1日の流れを教えてください。

福田:杜松倶楽部の1日の流れの例は、下記の通りです。

1日の流れの例

09:00~ 【日勤出社】通所の送迎&訪問介護
10:00~ 【遅番出社】【夜勤退社】
12:00~ 休憩
13:00~ レクリエーション・個別の活動
15:00~ おやつ
16:00~ 【夜勤出社】通所の送迎&訪問介護
18:00~ 【日勤退社】
19:00~ 【遅番退社】
20:00~ 就寝介助(予定時間はなく、利用者に合わせる)
23:00~ 休憩
06:00~ 起床介助(予定時間はなく、利用者に合わせる)

■日勤 09:00~18:00(休憩1時間)
■遅番 10:00~19:00(休憩1時間)
■夜勤 16:00~10:00(休憩2時間)

訪問介護担当の人は、朝、訪問介護に行って昼から通所の仕事に入ったり、逆もあったりします。杜松倶楽部では、基本的に「訪問介護のみ」のシフトはありません。

営業職から転職!「ふくしってなんだ?」からスタートした介護の仕事

___福田さんの経歴を教えてください。

福田:損害保険の営業を5年間勤め、介護業界に入りました。介護の仕事は、アルバイトを含めて約7年、若竹大寿会に入職してからは、5年になります。
介護リーダーは今年の10月から務めています。

___保険の営業職から、介護職に転職ですか?

福田:はい。自分でも思いきったなと思います(笑)。きっかけは、営業で担当していたおばあちゃん世代のあるお客様でした。
営業って、頭下げることが多い仕事なんですけれど、そのおばあちゃんは私に「話を聞いてくれてありがとう」と言ってくれたんです。
「いや、お礼を言うのはこっちだよ」って思って、感謝されたことに驚きました。
そのおばあちゃんは続けて、

あなたは、福祉の仕事のほうがあっているわ」と言いました。

当時、無知だった私は、「え? ふくしってなんですか?」と聞きました。
すると、おばあちゃんは「私、実はデイサービスに通っているの」と言い、そもそもデイサービスすら分からなかったので、「え? なんのサービスですか?」と聞き返しましたね(笑)。

そこで、そのおばあちゃんに福祉業界のことを教えてもらい、「おじいちゃん・おばあちゃんの話を聞くだけでありがとうと言われる仕事があるんだ」と思って、介護業界で働こうと思いました。
今思えば、本当にバカな発想ですね(笑)。

___素敵なおばあちゃんがきっかけで介護職への一歩を踏み出したのですね。

福田:そうですね。5年間働いた営業をスパッと辞め、デイサービスのアルバイトを始めました。
おばあちゃんの行っていた『「デイサービス」とは、どんなところだ?』と気になっていたので(笑)。
そのデイサービスの所長が介護福祉士の取得をすすめてくれ、介護学校に通いました。介護学校を卒業後、すぐに今の法人である若竹大寿会に入職しました。

___若竹大寿会では最初、どんな施設に勤めていたのですか?

福田:最初は、従来型の特別養護老人ホームに配属され、1年後に杜松倶楽部へ異動しました。
私は、品川区育ちなので、杜松ホームがオープンしたら地元で働きたい旨を法人に伝えていたんです。
その希望がかなって異動となったのですが、異動先が「看多機(当時は小規模多機能型居宅介護)」だったのは予想外でしたね……。
看多機の上の階にある特養で働くと思っていたので、正直なところ、戸惑いました。

けれど、今では看多機で良かったと思います。

利用者さんを深く知れるのは、在宅サービスの楽しみのひとつ

___それは、どうしてでしょうか?

福田:看多機は在宅サービスのひとつなので、利用者さんの「施設に入る前の生活」が見られます。
特養や有料老人ホームなどの施設で働いていると、施設に入所した利用者さんの生活しか見られないですよね。「施設に入る前の生活」は、情報として得られたとしても実際に見ることはできません。

私は、「ふくしってなんだ?」「デイサービスってなんだ?」という興味からスタートしました。だから、利用者さんにも、興味を持ち続けたい
利用者さんもそのほうが嬉しいんじゃないかなと思います。ごはん食べてお風呂入ってという何も変化のない日々を過ごすよりも、自分の好きなものや思い出の話をしたほうが楽しいですよね。
好きなもの、生活環境、家族関係など……利用者さんのことを深く知れるのは、在宅サービスの楽しみのひとつだと思います。

___看多機や在宅サービスの仕事が合っているのですね。

福田:そうですね。身体介護などの介護スキルだけではなくて、利用者さんの在宅生活を続けるための支援ができる点がいいなと思います。

利用者さんは、たとえ身体の状態が改善したとしても、在宅生活ができるかといったら、そうではありません。ご家族や地域の方々、さまざまな支援の力を借りて、やっと自宅で生活できます。
私たちは「家で過ごしたい」と願う利用者さんのために、「どんな支援ができるか」を多方面から考る必要があるのです。
私たちのサービスだけでは、どうしたって対応できないところもある。だから、たとえば、夜徘徊してしまう人であれば、地域の交番に頼んで夜のパトロールを強化してもらうなど、いろいろな工夫ができます。
「私たちでは対応できない」で終わるのではなく、「じゃあ、どうすれば在宅生活ができるのか」を考える
そうやって、利用者さんのいろんな状況をふまえて、対応策を考えられるのが、在宅サービスです。

もちろん、うまくいくことばかりではありません。むしろ、うまくいくことは少ないでしょう。けれど、挑戦していくことが大事だと思います。
そして、挑戦できるのが、看多機なのです。

看多機で働くことによって得られる、3つのメリット

___看多機で働くメリットは、なんでしょうか?

福田:小多機にも通じるかもしれませんが、3つのメリットがあります。

1つめは、「通所」「訪問介護」「宿泊」の3つのサービスによって、自宅で生活する利用者さんの1日の様子を把握できることです。
基本的に在宅サービスは夜勤をしないため、利用者さんの夜間の様子がわかりません。
施設だと、利用者さんが過ごしてきた家での生活がわかりません。
それが、看多機や小多機では、どちらもわかります。

在宅の利用者さんの夜間の様子がわかることは、適切なケアにつながります。
たとえば、日中うとうとしてしまう利用者さん。「夜眠れていないのかな?」という憶測ではなく、宿泊を利用してもらうことによって、夜眠れていない事実を明確にすることができます。
理由がはっきりすることによって、スタッフは適切なケアや声掛けができるのです。

2つめは、「通所」「訪問介護」「宿泊」の3つのサービスを経験することによって、スキルアップにつながることです。
ひとつだけではなく、「通所での介護」「訪問介護」「夜勤の介護」の3つの知識を得られるので、どの施設形態でも通用する介護職員になれるでしょう。

3つめは、身体介護スキルが身につくことです。
看多機の利用者さんのほとんどは、病院から退院したばかりの人。はじめて自宅での介護が必要になった利用者さんを前に、うろたえるご家族も多いのです。
「どうやってやるんですか?教えてください」と介護の仕方を教えてほしいというニーズに応えるため、ご家族が見ている前で介助をしたり、オムツの当て方を教えたりします。
人に教えなければいけないため、中途半端な介助はできません。
日々、自分の介護スキルを磨いています。
緊張する場面ですが、施設ではなかった経験なので、良い刺激となっていますね。

___逆に、看多機の大変なところはありますか?

福田:そうですね……。私たちがどこまでやるかの「線引き」は、難しいなと思います。
定額制ということもあって、多くのサービスを使いたいし、私たちに任せたいと思うご家族は多いです。
たとえば、看多機の「宿泊」。通常のショートステイとほとんど同じサービスですが、その違いは予約を入れるタイミングにあります。
品川区のショートステイでは、基本的に2ヶ月前に予約を入れる必要がありますが、看多機の宿泊は、空いていれば前日でも予約できます。
看多機は、柔軟にサービスを利用できたり、変えたりできるため、よりニーズに応えやすい事業なのです。
しかし、介護保険適用のサービスである以上、できることはご家族にしてもらわなければいません。とはいえ、「ここまではやります」などの共通のマニュアルはなく、利用者さんやご家族の状況によって、対応すべき内容が変わります。その理解を得たり、判断をしたりするのが難しいですね。

看多機はまだまだ事業所数が少なく、認知度も低いです。
看多機を利用する人も働く人も、看多機での経験値はそれほど高くないでしょう。知らないことによってトラブルになる可能性もあると思うので、より多くの人に「看多機」を知ってもらい、看多機という事業がますます発展していければいいなと思います。

理想は「福田なら手伝ってやるか」とみんなが支えてくれるリーダー

___福田さんは、10月から介護リーダーをされていますね。リーダーをやってみて、どうですか?

福田:楽しいですよ。
杜松倶楽部は、もともと介護リーダーがいませんでした。
リーダー不在の環境で働くうちに、こんなリーダーがいたらいいな、という自分の理想のリーダー像が出てきました。結果的に、それがよかったと思います。
自分の理想のリーダー像があるから、リーダーの話が来たときに、受けようと思えました。

___理想のリーダーとは、どんな人ですか?

福田:「福田なら手伝ってやるか」とみんなが支えてくれるリーダーです(笑)。
私は、完璧なリーダーや絶対失敗しないリーダーになるつもりもないし、なれないとわかっています。
だから、スタッフみんなの力を借りたい。
みんなで支えあうことで完璧なチームができるんじゃないかなと思います。

一人ひとりができることをやって、できないところを補いあう。利用者さんだけではなく、スタッフからも「ありがとう」が飛び交う、そんな職場にしたいなって思っています。

___さいごに、全国の介護職員へメッセージをお願いします。

福田:「介護を思いっきり楽しんでください」と伝えたいです。
介護の仕事って、我慢するのが仕事みたいになっている部分もあると思います。
暴言はかれたり、たたかれたりしても、笑顔で対応しなきゃいけない。そのなかで楽しみを見つけるのは大変だと思います。しかし、何かしら楽しめる仕事が絶対にあると思うので、それを見つけてほしいと思います。

たとえば、私の場合は「入浴介助」がとくに楽しいです。
杜松倶楽部の浴室は、個浴のため、入浴介助は、利用者さんに対してマンツーマンでサービスできる時間なんです。
そのひとり舞台で、介護スキルやトーク技術などのあらゆるスキルを総動員してどれほどいいパフォーマンスが提供できるか、と日々張り切ってがんばっています。
入浴前に「やだやだ」言っていた利用者さんに、「あー気持ちよかった」と言ってもらえたら、すごくうれしいですよね。
「最高にいい風呂に入れた」と言ってもらえることは、自分の自信につながります。
そうやって、楽しみを見つけながら仕事をしていけば、つらいことも乗り越えていけるのではないでしょうか。

介護・福祉の仕事は、つらいこともあるけれど、本当にやりがいがあります。
しかし、私のように福祉のことを知らない人や、「3K」や「徘徊」などのマイナスのイメージの介護しか知らない人もいるかもしれません。
たしかにつらい部分もあります。だけど、利用者さんと一緒にお腹を抱えて笑える時間もあるんだよって伝えたいです。
日本の未来を担う若い人をはじめ、多くの人に、介護の楽しさを知ってもらえたらうれしいです。

編集後記

営業職から、まったく業種の違う介護職へ転職した福田さん。「この仕事ができて良かった」と語るその目には、迷いや不安はなく、強い思いを感じられました。
介護業界は、福田さんのように、他業界から転職した人も少なくありません。そして、他業界の出身であっても、努力が評価されて、リーダーとして活躍する人もいます。

介護業界は本当に忙しく、目の前の仕事をこなすだけの毎日になりがちな環境だと思います。
けれど、そんな環境に負けずに楽しみを見いだし、自分の思い・考えを会社や上司に伝えていくことは大事なんだと感じました。

もし、それがどうしてもできないような職場なら、他の施設や事業所で新たな一歩を踏み出してもいいかもしれません。

※この取材記事の内容は、2018年11月に行った取材に基づき作成しています。

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