インタビュー

「一般企業と真っ向勝負!」自ら異動を希望し入居率99%を実現!現役スタッフに聞いたサ高住のおもしろさ

神奈川県横浜市にあるサービス付き高齢者向け住宅 わかたけの杜
前々回の記事では、わかたけの杜に関して紹介し、前回の記事では、管理者の金井さんに管理者としての考えなどをお伺いしました。

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この記事では、わかたけの杜の主任で生活相談員である西條将崇(さいじょう まさたか)さんに普段の仕事内容やサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)で働き始めたきっかけなどをお伺いしました。

サ高住で働いた経験がない人やサ高住で働いてみたい人は、ぜひご一読を!

サ高住によって仕事内容はさまざま!わかたけの杜では現場のスタッフがオールマイティに活躍

___サ高住には、どのような特徴がありますか?

西條将崇さん(以下、西條):サ高住とは、主に民間事業者が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅のことです。地域包括ケアシステム拡充の施策として、2011年に創設されました。

サ高住には、「一般型」と「介護型」の2種類のタイプがあります。一般型で義務づけられているサービスは、「生活相談」と「安否確認」の2つのみ。介護が必要となった場合は、訪問介護やデイサービスなど、外部の介護サービスを利用することができます。
わかたけの杜は「一般型」のサ高住ですので、介護サービスは提供していません。

___なるほど。では、一般型のサ高住のお仕事内容とは、どのようなものでしょうか。

西條:そうですね。「一般型」のサ高住といっても、その仕事内容は法人や事業者によって異なります。あくまで、「わかたけの杜」の場合で言うと、その内容は本当に多岐にわたります。

まず、どのサ高住にもついている『生活相談サービス』と『安否確認サービス』。
生活相談サービスは、365日、毎日の生活の困りごとを相談してもらっています。たとえば、「高いものを下ろしてほしい」「ラジオが壊れてしまった」などの日常的な困りごとから「家族との関係が悪くて悩んでいる」などの人間関係の悩みまで、本当にさまざまな内容の相談を受けます。
どんな内容であっても、「うちでは相談に乗れません」と門前払いすることは一切なく、一つひとつの相談に対して、どういった返答をすべきか真摯に考えて対応しています

安否確認サービスは、スタッフが利用者さんのお部屋を訪問するところや、機械などのセンサーで対応するところなど、サ高住によっていろいろな方法があります。わかたけの杜では、部屋に緊急通報のボタンや無線で連絡が取れるシステムを配置しています。

そのほかの主な仕事内容は、以下の通りです。

そのほかの主な仕事内容
  • サ高住の賃貸住宅の営業
  • 利用率(収入面)の管理
  • 苦情の対応
  • 修繕などの住宅管理
  • 退去後のリフォームに関する調整(職人との日程調整など)
  • 救急車を呼ぶなどの緊急時対応
  • 共用スペースの掃除
  • 塩素濃度などの水質チェック
  • 配食弁当のお届けと下膳
  • 敷地内の植物の管理
  • 事務作業
  • 賃貸借契約書の読み上げ など

相談があれば一緒に庭の手入れをしたり、一緒にお茶をしたりというサービスも通常の業務内容として行っています。

先述したように、仕事内容はサ高住によって大きく異なります。義務付けられている『生活相談』と『安否確認』のみを提供し、そのほかの仕事は外部に委託しているサ高住も少なくありません。
わかたけの杜では、これらの仕事を全部、現場のスタッフで行っています。また、介護事務などのひとつの業務に特化した専門職もいませんので、みんながオールマイティに仕事をこなしています。

___盛りだくさんの仕事内容ですね!生活相談サービスでは、どんな内容でも対応するのでしょうか。

西條:相談を受けたとき、どこまでこちらで対応するかの線引きは非常に難しいです。
相談を受けたときに確認することは、利用者さんの介護状況です。介護保険の利用の有無を確認し、介護保険で解決できる内容かどうかの判断をします。
介護保険で解決できる内容であれば、介護保険を利用してもらいます。
介護保険で解決できる内容とは、その困りごとが常態化していること。
困りごとが常態化しておらず介護保険を利用できない場合で、難しい対応を求められるときは、チームで話し合って解決策を模索することもあります。
つまり、利用者さんによって対応が異なります。そのため、「ここからここまでを対応します」と明言することができないのです。利用者さん一人ひとりの状況に応じて、ベストを探し、どの社会的資源につなげるべきかを考えて対応する、それがわかたけの杜のスタッフの仕事です。

▲利用者さんと笑顔で話すと西條さん。日頃から信頼関係を築いている様子が伺える

人件費は節約しない!手厚い人員体制で安心安全の環境を提供

___わかたけの杜の勤務体制を教えてください。

西條:わかたけの杜は、「早番」と「遅番」の2シフト制です。

わかたけの杜の勤務体制
  • 【早番】7:00~16:00
  • 【遅番】11:00~20:00
  • 夜勤はなし
  • 7:00~20:00まではスタッフが常駐

1日の勤務体制は、早番と遅番1人ずつ、最低2名と日によって数名の非常勤が出勤します。
一般的に、人件費をできるだけ少なくして利益を上げる方法をとるサ高住が多いなか、わかたけの杜は手厚い人員体制だと思います。日本一人件費がかかっているサ高住ではないでしょうか(笑)。

___手厚い人員体制だと利用者さんも安心ですね。夜間はどうしているのでしょうか。

西條:夜間はオンコール体制をとっています。
オンコール用の携帯電話を当番制で持ち回り、緊急時などの対応をします。
緊急時は、併設している訪問介護が夜も対応しているため、訪問介護事業所と連携をとって指示を出したり、家族に連絡したりします。
このオンコールは強制ではなく、スタッフの事情も考慮して、対応できない方には無理にお願いしていません。さらに、オンコール手当もあるので、働く側のメリットは十分にあると思います。

▲オンコール用の携帯電話を紹介する西條さん。現場を離れているときは肌身離さず所持している

自ら“一番の戦場”への異動を志願

___西條さんの経歴を教えてください。

西條:私は、今から約13年前に新卒社員として社会福祉法人若竹大寿会に入職しました。最初は、特別養護老人ホームのわかたけ青葉に配属され、そこで12年ほど働きました。
特養では、介護リーダーや主任、生活相談員などの経験をし、今の仕事の基礎となる部分を学びました。
その後、人事異動でわかたけの杜に配属となり、今に至ります。

___サ高住に異動と伝えられたときは、どう感じましたか?

西條:実は……この異動は、自分から理事長にお願いしたものなんです。
なぜ異動したかったのかというと、理事長の存在がきっかけでした。

新入社員当時、理事長に「フットサル部が欲しいです」と伝えたところ、本当に私の希望をかなえ「フットサル部」を発足してくれたのです。私の思いを大切にしてくれたその行動にとても感動しました。

その理事長が5年ほど前に、法人内でスピーチを行う機会がありました。
その内容は、「今後、介護業界には一般企業が大量に参入してくるだろう。平成元年から福祉の業界で全力でやっていて実績もある若竹大寿会は、ほかの一般企業に負けられない。負けないための行動を起こしていかなければならない。そのためには、今いる職員の力が必要だ」という趣旨でした。
深い恩義を感じている理事長の力になりたいという思いはここで行動として繋がります。

実際に介護業界には多くの一般企業が参入しています。
しかし、特養のほとんどは社会福祉法人が母体のため、一般企業と戦っている実感はあまりありませんでした。「一般企業と一番戦えるのはどこだ」と考えたときに浮かんだのがサ高住です。サ高住のほとんどは株式会社が運営しているため、戦いの場としては最適だと思いました。

___実際にサ高住で働いてみて、どうですか?

西條:サ高住で1年間働いた結果、入居率は99%以上。わかたけの杜の利用率は日本一ではないでしょうか。
そのほか、数値にはならないけれど、管理者の金井が実現したい夢や仕事内容の部分でも理想に近づきつつあるので、日本一のサ高住になってきているのではないかと自負しています。
感謝の思いがやっとカタチになってきたと感じています。

収入を維持し、スタッフと利用者を守るのは特養もサ高住も同じ

___特養からサ高住への異動、とても変化を感じたのではないでしょうか。

西條:そうですね。特養の相談員もケアマネジャーや現場のスタッフ、ご家族と連絡を取っていたので、とても忙しかったです。
どちらも忙しいのですが、違いというと、やはり仕事内容です。特養の仕事内容はある程度市や国の方針で決まっているものですが、サ高住の仕事内容は多岐にわたります。そして、サ高住によっても内容がバラバラ。それもサ高住の特徴のひとつといえるでしょう。

異動によって多くの変化を感じましたが、生活相談員という職種でみると、根幹の部分は同じだと思いました。
根幹の部分とは「施設の収入の維持」です。
特養の相談員でも、サ高住の相談員でも、収入を維持していくことはとても大切な仕事のひとつ。収入を維持するためには、高い入居率を維持する必要があります。
なぜ収入の維持が大切かというと、入居率が減って利用率が崩れると職員の雇用も崩れます。職員が減ると人手不足で忙しくなり、満足に相談対応ができなくなります。相談対応ができなくなると顧客満足度も減り、さらに利用率が減るという悪循環になってしまいます。

これでは、スタッフも利用者さんもつらいですよね。
サービスの質を上げるために使うのであれば、お金を稼ぐことは悪いことではありません。
そう後輩にも伝えて、わかたけの杜の収入と安定を守っています。

___特養で学んだことを活かして、さらにサ高住でも活躍しているのですね。

西條:活かすこともありますが、新たに多くのことも学んでいるため、とてもいい勉強の場だと感じます。借地借家法など、自分の知らないことを知れるのは非常に楽しいですね。
さまざまな知識を得て、さまざまな相談に対応するので、バリエーション豊かなコミュニケーション力が身についたと思います。
それは、なんでもやらせてくれる管理者の金井の裁量でもあると感じます。

何度も言いますが、サ高住は法人や事業者によって内容が大きく異なります。
介護の仕事から離れようと思ってサ高住に入職したのに、同法人の介護施設の介護職と兼任だった、という話もよく聞きます。
うちのようなサ高住専任のスタッフを置いているところもあれば、他施設と兼任のところも少なくありません。
また、一般型と介護型でも仕事内容は大きく異なります。
サ高住に就職を考えている方は、その法人や事業者の運営形態や仕事内容をしっかりと確認したほうがいいと思います。

___さいごに、介護職員に向けてメッセージをお願いします。

西條:介護の仕事とは、未来をつくっていく仕事だと思います。
私たちもいずれ、年老いていき、介護施設や介護保険を利用していくでしょう。
介護の仕事は、たしかにつらいことが多いです。けれど、自分たちが未来をつくっているんだという気概をもって、前を向いていけたらいいなと思います。
お互い、がんばりすぎないようにがんばりましょう!

▲施設をの見学中、西條さんが利用者さんに声をかける場面も。気さくな声かけから、西條さんのコミュニケーション力の高さが伺えた

編集後記

一つひとつ丁寧な口調で、理路整然と話す西條さん。介護職というよりも、一般企業に勤めるセールスマンのような雰囲気がありました。
冷静さの中に、理事長への恩義や金井さんへの信頼を強く秘めており、今後も強い思いをもって介護業界で活躍されるのだろうと思います。

西條さんのように、自分の希望がかなう職場は少ないかもしれません。けれど、法人のため、職場のため、介護業界のためにより活躍できる場所があれば、伝えてみてもいいのではないでしょうか。

※この取材記事の内容は、2018年11月に行った取材に基づき作成しています。

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