介護の知識

【平成30年度・2018年度】介護職が知っておきたい介護保険制度改正の5つのポイント

平成29(2017)年に、介護保険法が改正されました。
この改正により、どのような変化が起きるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
大きな変化としては、現役世代並みの所得のある一部の利用者さんの負担割合が、2018年の8月より2割から3割に増えます。
請求や実績業務がある方はもちろん、利用者さんと密接に関わりのある介護職員だからこそ、知っておく必要がありますよね。
そのほか、介護医療院が創設されるなど介護職員の職場環境に関わる改正もあるため、介護職員は必ずチェックしておきましょう。

この記事では、平成30年度・2018年度 介護保険制度改正について5つのポイントにしぼって、図表を用いながらわかりやすく解説します。

介護保険制度とは

介護保険とは、社会全体で高齢者を支える仕組みとして平成12(2000)年4月1日に施行された制度です。
高齢化が進むにつれて、介護を必要とする高齢者が増加することで介護者が増え、介護期間の長期化によって介護者の負担が大きくなることが見込まれます。しかし、核家族化の進行によって介護を担う人が減っていたり、介護をする家族の年齢が高齢だったりするなど、介護家族をめぐる状況の変化があり、従来の制度では限界を感じることとなります。
そのような状況を踏まえて、介護が必要な高齢者を社会全体で支え合う仕組みの「介護保険制度」が創設されました。

介護保険制度は3年ごとに改正されています。
平成27(2015)年の改正では、それまでの原則1割だった、利用者さんの自己負担額が見直され、一定の所得のある高齢者は自己負担割合が2割に増えたことで、大きな注目を集めました。
そして今回の改正では、現役世代並みの所得がある高齢者については3割負担となり、今年(2018年)の8月から適用されます。

介護保険の保険者と被保険者とは

介護保険における保険者は市区町村です。
40歳以上の人は介護保険の加入者(被保険者)になるため、在住する市区町村(保険者)へ保険料の納付を行います。
介護保険の加入者(被保険者)の対象は、65歳以上の人(第一号被保険者)と40歳から64歳の人(第二号被保険者)です。

介護保険適用のサービスを利用できるのは、65歳以上で「要支援・要介護」と認定された人です。ただし、40歳以上64歳以下の人でも、16種類の「特定疾病」(※)により「要支援・要介護」になった場合には、介護保険サービスを利用できます。


※16種類の特定疾病とは、次の通りです。
筋萎縮性側索硬化症
脳血管疾患
後縦靭帯骨化症
進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
骨折を伴う骨粗しょう症
閉塞性動脈硬化症
多系統萎縮症
慢性関節リウマチ
初老期における認知症
慢性閉塞性肺疾患
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
早老症
末期がん

平成30(2018)年度 改正の5つポイント

平成30(2018)年度の改正のポイントは、5つあります。

1つめは、自立支援・重度化防止に向けた取組、
2つめは、新たな介護保険施設「介護医療院」を創設、
3つめは、新たに位置づけられた「共生型サービス」、
4つめは、現役世代並みの所得の利用者は「3割負担」に、
5つめは、報酬額に比例して負担する「総報酬割」を介護納付金で導入 です。
それでは、それぞれの詳しい内容を図表を使用しながら解説していきます。

1.自立支援・重度化防止に向けた取組のポイント

 

平成30(2018)年度の介護保険制度改正では、高齢者の自立支援や介護度の重度化を防止するための仕組みが制度化されました。市町村の介護保険の保険者としての機能が強化・発揮される仕組みとなっています。

利用者さんの要介護度が上がると、介護サービスの費用が増加し、介護保険制度の財政を圧迫することになります。今後、介護が必要となる人は増え続けていく見込みです。限られた財源の中で介護保険制度を成り立たせるには、介護サービス費用を減らす、つまり介護予防に努めることが重要となります。
自立支援や要介護度の重度化を防ぐことは、利用者さんのQOL(生活の質)を向上させるだけではなく、財政の圧迫を軽減することで、サービスを必要とする人に必要なサービスが提供されるようになるため、大事な取り組みのひとつといえます。

要介護状態の維持や改善、地域包括支援センターなどが主催する多職種による地域ケア会議の開催状況などの実績が評価された自治体には、インセンティブが付与されます。

要チェック!介護職員が知っておくべきポイント

訪問介護・通所介護・特別養護老人ホーム等において、リハビリ専門職と連携して作成した計画にもとづく介護が評価されることになります。このことや上記の他職種による地域ケア会議の開催などを受け、介護職員には、リハビリ職などの多職種との連携がさらに求められるようになるでしょう。

通所介護事業所では「利用者さんのADL(日常生活動作)の維持または改善が一定の水準を超えた場合」や、特別養護老人ホームなどで、「褥瘡予防のための計画的な管理」「排泄介助が必要な利用者さんに対し、多職種が連携した計画の作成・実施の場合」などに対する評価が創設されました。
自立支援や重度化防止に取り組む事業者への介護報酬が手厚くなったということも、押さえておきたいポイントですね。

そして、上記のインセンティブの付与などの影響を受け、市町村によっては現状以上の要介護の認定が厳しくなるという懸念があります。利用者さんやご家族の精神的ケアがより一層必要になるのではないでしょうか。

2.新たな介護保険施設「介護医療院」を創設

 

平成30(2018)年度の介護保険制度改正では、新たな介護保険施設として「介護医療院」が創設されました。
介護保険施設とは、介護保険サービスで利用できる公的な施設のことです。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老人保健施設)、介護療養型医療施設(介護療養病床)の3種類があります。

医療ケアの必要な高齢者は、介護療養型医療施設(介護療養病床)で療養上の管理や看護、介護や機能訓練などのサービスを受けることができます。

平成18(2006)年の医療保険制度改革と診療報酬・介護報酬の同時改定により、平成23(2011)年度末の介護療養型医療施設(介護療養病床)の廃止が決定しました。介護療養型医療施設(介護療養病床)が担っていた役割は、介護療養型の老人保健施設などに転換していくことになります。

しかし、期限内に転換は進まず、設置期限が平成29(2017)年度末まで延長され、さらに平成29(2017)年には、平成35(2023)年まで延長されています。

介護療養型医療施設(介護療養病床)が果たしている機能に着目し、今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズに対応するための施設として、平成30(2018)年度の介護保険制度改正で「介護医療院」が創設されました。
介護医療院とは、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」などの機能に加えて、利用者さんの有する能力を活用して、自立した日常生活を営むことができるようにする「生活施設」としての機能を兼ね備えています。

要チェック!介護職員が知っておくべきポイント

介護医療院は、病院または診療所から介護医療院としての新施設へと転換することが可能です。その場合は、転換前の名称を引き続き使用できます。
介護医療院へ転換するには、床面積を介護老人保健施設相当に広げる必要があります。多床室の場合、家具やパーテーションなどで間仕切りを設置して、プライバシーに配慮した療養環境の整備が求められています。そのため、転換前に大規模改修が必要となる病院や診療所も出てくるでしょう。

自分の勤め先が病院の方は、今後、病院が「介護医療院」へ転換する可能性もあるので、詳細をチェックしておきましょう。

3.地域共生社会の実現に向け、新たに「共生型サービス」を位置づけ

平成30(2018)年度の介護保険制度改正で、新たに位置づけられたのが「共生型サービス」です。

今までのサービスの仕組みでは、障害者は「障害福祉サービス事業所」などからサービスを受け、65歳以上の高齢者は「介護保険事業所」からサービスを受けます。原則として介護保険が優先されるため、65歳以上になった障害者は、介護保険事業所からサービスを受けることになります。つまり、今まで利用していた障害福祉サービス事業所からサービスを受けられなくなるということです。

このような公的支援の「縦割り」を見直し、高齢者や障害者がともに利用できる「共生型サービス」を介護保険、障害福祉それぞれに位置づけられました。具体的には、介護保険または障害福祉の居宅サービスの指定を受けている事業所が、もう一方の制度の指定も受けやすくする特例が設けられました。
これにより、障害者が65歳以上になっても、使い慣れた事業所のサービスが利用しやすくなります。対象となるサービスは、ホームヘルプサービス(訪問介護)やデイサービス、ショートステイなどです。

要チェック!介護職員が知っておくべきポイント

共生型サービスによって、障害者を対象とした訪問介護やデイサービス、ショートステイなどで働いている介護職員は、制度によって利用者さんと離れなくてもいいようになるでしょう。

ただし、共生型サービスの指定を受けるかどうかは、各事業所が地域の高齢者や障害者のニーズを踏まえて判断するため、自分の事業所が必ず「共生型サービス事業所」となるわけではありません。
自分の勤め先が共生型サービスの指定を受けるかどうか気になる方は、事業所長や責任者に確認しましょう。

4.現役世代並みの所得の利用者は「3割負担」に

 

平成27(2015)年の介護保険制度改正では、一定の所得以上の方の自己負担が2割となりました。平成30(2018)年の改正では、同年8月より、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合が3割となります。

これは世代間や世代内の公平性を確保し、介護保険制度を持続するための見直しです。

2割負担となる基準は、合計所得金額(給与収入や事業収入などから給与所得控除や必要経費を控除した額)が160万円以上であり、年金収入+その他合計所得金額が280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)とされています。

3割負担となる基準は、合計所得金額が220万円以上であり、年金収入+その他合計所得金額340万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合463万円以上)です。

ただし、介護サービスの利用者負担には月々の上限額が設定されています。これを「高額介護サービス費」といい、1ヵ月に支払った利用者負担の合計が上限を超えた場合、申請により超えた分が払い戻されます。上限金額は月額4万4400円です。
例えば、特別養護老人ホームに入所している2割負担者は、すでに上限金額にあたっているため、負担増とはなりません。

そのため、3割負担に該当し負担増となる方は、介護保険の受給者の約3%にあたる、約12万人と試算されています。

要チェック!介護職員が知っておくべきポイント

介護職員は、関わりのある利用者さんの正しい負担割合を把握し、利用者さんやご家族の不安な気持ちに寄り添いながらケアすることが求められるでしょう。また、利用者さんの情報を入力する実績や請求業務に携わる方は、事務処理で間違いが起こらないように注意が必要です。

5.報酬額に比例して負担する「総報酬割」を介護納付金で導入

 

平成30(2018)年度の介護保険制度改正では、40歳から64歳までの第二号被保険者が納める保険料に報酬額に比例して負担する仕組みである「総報酬割」が導入されました。

これは、各医療保険に加入している人が対象で、国民健康保険に加入している人は改正の影響は受けません。

各医療保険者が納付する介護納付金は、いままで被保険者数に応じて負担する「加入者割」が適用されていました。加入者割では、医療保険者問わず、第二号保険者の一人当たりの保険料負担額は、同額となります。しかし、健保組合によって負担能力は異なるため、加入する医療保険によって負担額への不公平感が生じてしまいました。
そのため、報酬額に比例して保険料を負担する「総報酬割」へ変更されます。
平成26年度の実績をベースにした試算では、総報酬割導入により1300万人の被保険者が負担増となりますが、1700万人の被保険者が負担減となります。

総報酬割は平成29(2017)年8月分より段階的に導入されており、全面導入されるのは2020年度を予定しています。

要チェック!介護職員が知っておくべきポイント

利用者さんに直接関わることではありませんが、ご家族から総報酬割に関する質問があるかもしれません。また、40歳以上の介護職員にとっては自分が支払う保険料であり、お給料としてもらう介護給付費の財源の仕組みのことなので把握しておいた方がいいでしょう。

まとめ

平成30年度・2018年度 介護保険制度改正の5つのポイントを紹介しました。
介護に携わるみなさんにとって、介護保険制度改正の内容を把握することはとても大事なことです。
改正によって大きな変化を伴う場合、介護職員の対応も変化せざるを得ません。
正しく理解し、その変化にいちはやく対応することで、改正に混乱することなく働くことができるでしょう。

参考文献・サイト

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