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老老介護 ~在宅介護者の7割が60歳以上、どう立ち向かう?~

超高齢化社会を迎えた今、高齢者同士による「老老介護」が増えています。日本の平均寿命が延びるにつれて、深刻になってきました。介護疲れから殺人事件に発展するケースもあり、決して見過ごせない状況です。
老老介護介護の環境にいる利用者さんも多く、その現状を知ることは介護職員にとっても大切です。悲しい事件や事故を未然に防ぐためにも「老老介護」の現状について、知っておきましょう。

老老介護の現状、在宅介護者の約7割が60歳以上

こちらは、日本における在宅介護者の年齢分布のグラフです。
※厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」H25(www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/05.pdf)より

介護者の年齢分布グラフ

「60~69歳」が31.0%、「70~79歳」が24.8%、「80歳以上」が12.9%と、60歳以上が7割近くを占めています。介護している高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の多さがうかがえます。

核家族化、老老介護の背景にあるもの

老老介護の原因は大きく下記2点か考えられます。

①止まらない核家族化

昔は当たり前だった「長男は親と同居する」という神話は、今ではもう崩れつつあります。少子化やライフスタイルの変化により、今では核家族が最もメジャーな日本の世帯形態です。特に、都心部ではその傾向が強く、老老介護が加速度的に増えています。

②夫や妻以外に介護されたくない、という価値観

2000年に介護保険制度が始まって15年。60歳以上の世代にとって、介護サービスを利用することへの抵抗感は、いまだに根強く残っています。「他人の世話にはなりたくない」という心理面も、老老介護に拍車をかけていると言えそうです。

老々介護の問題点

老老介護が問題視される背景には、介護の肉体的・精神的負担の大きさがあります。入浴介助や移動介助といった身体的な介助では、足腰の丈夫さが求められます。介護のプロでさえ、腰痛に悩まされていることが多い中で、高齢者が介護する場合はさらに負担がかかります。

また、身近な人を介護することは精神的な負担もかかります。特に認知症がある場合は、物忘れなどの症状を症状だと割り切れず、被介護者に辛く当たってしまうケースも少なくありません。介護によるストレスが溜まると、ネグレクトや身体拘束といった虐待につながるリスクも高まります。

相次ぐ、老老介護の事件

老老介護での虐待、殺人の事件を耳にする機会も増えています。

◆自宅に放火容疑で93歳逮捕 「妻の介護に疲れ」
埼玉県川越市で住宅1棟が焼ける火事があり、警察はこの家に住む93歳の男が自分で火をつけたとして放火の疑いで逮捕。この住宅に住む無職の石塚森三容疑者(93)が近くの交番に「自宅に火をつけた」と自首してきた。警察の調べに対し「妻の介護に疲れた」などと供述しているという。
(出典:NHKニュース 2017.7.15 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170715/k10011059801000.html)

◆寝たきり夫の首にもひも 介護苦に無理心中図った可能性
大阪府茨木市平田の民家で、住人で無職の女性(77)が首をつって死亡しているのが見つかった。室内には無職の夫(82)も首にひもをくくられた状態でベッドの上に横たわっていた。夫は介護が必要で寝たきりの状態だったといい、女性が無理心中しようとして夫の首を絞めた上で、自らも首をつった可能性もあるとみて捜査を進める。
(出典:毎日新聞 2017.7.4 http://www.sankei.com/west/news/170704/wst1707040012-n1.html

◆病気の妻殺害未遂疑い 「介護に疲れた」71歳夫逮捕
殺人未遂の疑いで袖ケ浦市野里、自称無職、山口道雄容疑者(71)を現行犯逮捕した。「介護に疲れた」と容疑を認めているという。山口容疑者は妻と2人暮らし。妻は脳梗塞のため2015年10月ごろから寝たきりで、主に山口容疑者がひとりで介護していたとみられる。山口容疑者が自ら「妻を殺そうとして首を絞めた」と110番通報した。
(出典:千葉日報 2017.6.23 https://www.chibanippo.co.jp/news/national/417857)
 

 
いずれも共通しているのが、「介護疲れ」を理由にしていること。また、こうした殺人事件の加害者の約7割が『男性』。男性の介護者が陥りがちな深刻な事態も見えてきます。
 
 

解決策はある?無理なく「老老介護」するには

今後も、増え続ける老老介護。これ以上、悲惨な事件を増やさないために、私たちに何ができるのでしょうか。

問題の背景には、介護の悩みやストレスを、「ぎりぎりまで、本人だけが」抱え込んでしまっている点にあります。介護中は、自由な外出もしにくくなるため、どうしても孤立しやすいもの。ひとりきりで悩んでいては、有益な情報を集めるのも難しいでしょう。

大切なのは、老老介護をしている現状を周囲の人に把握してもらうこと。離れて住む家族や親戚がマメに連絡をしたり、近所の人の「大丈夫?」といった声がけがあるだけで、大分違います。まわりに相談したり、介護サービスを利用することは恥ずかしいことでも、手抜きでもないことをもっと周知することが必要です。

また、将来の介護に備えたお金を今のうちから準備しておくこと。お金があれば、老老介護に直面した時、選択肢が増やすことができます。一人ひとりが、高齢化社会に備えてできる取り組みをしていくことが肝になりますね。

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