介護の知識

高齢者を脱水から守ろう~予防法と対処法のポイント~

「高齢者は脱水状態になりやすい」と言われています。
「脱水がどういう状態わからない」「なぜ脱水になるのかわからない」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。脱水症に関して正しい知識がないと、予防や対処が難しくなってしまいますよね。高齢者は脱水状態になっていても自覚しづらいため、周囲の気配りと知識が必要不可欠です。
高齢者と関わる方に知っておいてほしい、
脱水症の説明、脱水症の原因、予防法と対処法をご紹介します。

脱水症とは

脱水症とは、体内の水分と電解質(塩分)が不足している状態をいいます。脱水症が起きると、下記のような状態になります。

脱水症状

軽度:めまいやふらつきが起こり、のどや口の中が乾きます。
中等度:頭痛や悪心、嘔吐が起こります。
重度:意識障害やけいれんが起こります。

重度の脱水症になると、命に関わることもあります。脱水症の疑いが少しでもあったら、すぐに対処をしましょう。対処法は本記事の後半部分にある「水分補給だけではダメ!?脱水症の対処法とは」でご紹介します。

なぜ脱水症になるの?

脱水症の原因と高齢者が脱水症を起こしやすい理由についてご紹介します。
 

脱水症の原因

人間の身体の半分以上は水分で成り立っています。
水分の割合は、成人だと60%、高齢者だと50%で、そのバランスを常に保っています。この水分のことを「体液」と呼び、体液は水分や電解質(塩分)などから構成されています。
嘔吐や発汗などによって水分と電解質が失われ、食べ物や飲み物からの供給が追いつかずにバランスが崩れて体液量が減少してしまうと、脱水症が起きます。
 

高齢者が脱水症を起こしやすい5つの理由

高齢者が脱水症を起こしやすいといわれている理由は、以下の通りです。

  1. 体液量が少ない

    加齢によって、体液の貯蔵庫である筋肉の量が減少します。そのため、成人よりも体液量が10%少なくなり、日ごろから脱水ぎみになっています。

  2. のどの渇きを自覚しにくい

    加齢によって感覚機能が低下しのどの渇きを感じにくくなるため、水分の摂取量が減少し、水分や電解質の補給が不十分になっています。

  3. 腎臓の機能が低下する

    体液を保つためには、腎臓で水分や電解質を再吸収する必要があります。加齢にともなって腎機能が低下すると、水分や電解質を再吸収できずに尿として排出するため、体液が失われやすい状態にあります。

  4. 全体的な食事量が不足する

    誤嚥を恐れたり食欲が低下したりして食事量が減ってしまうと、摂取する水分量や塩分量が不足し、水分や電解質の補給が不十分になっています。

  5. 水分補給を控える

    失禁やトイレに行く回数を気にして意識的に水分摂取を控えてしまい、体内の水分量が減少します。

脱水症を防ごう!

脱水症を起こしやすいため、注意が必要な高齢者。中でも、認知症の方には特に気をつける必要があります。認知症の方は、脳の機能が低下してしまうため、自律神経の働きも悪くなります。判断力の低下につながり、暑さが気にならなくなることもあるため、脱水症の自覚が困難になります。
高齢者の脱水症予防には周囲の人の気配りが必要不可欠です。ぜひ、下記の予防法を実践してみてください。

 

5つの脱水症予防法

  1. 暑さを避ける服装

    暑さが気にならない高齢者は、夏でも長袖に羽織ものやスカーフなどを着用し、厚着をする傾向にあります。声かけをして、涼しい格好を促しましょう。

  2. 外では、風通しの良い場所にいる

    外出しているときは、帽子や日傘などで直射日光を避け、風通しの良い場所にいるようにしましょう。

  3. 室内では、クーラーで気温や湿度を下げる

    節約やクーラー嫌い、暑さを感じないなどの理由でクーラーの使用を避ける人がいます。積極的にクーラーを使用するよう促しましょう。

  4. 食事や飲み物を制限しない

    食欲不振やトイレの回数を減らすために食事や飲み物を制限している人がいます。栄養をバランスよく摂取し、必要な水分量を補給しましょう。

  5. 寝る前、起床時、入浴の前後など、こまめな水分と電解質を補給

    一番の予防法はこまめな水分と電解質の補給です。就寝中や入浴中にも汗をかきますので、寝る前や起床時、入浴の前後などに補給をしましょう。

 

見逃さないで!脱水症のサイン

 下記のような状態のときは、脱水症を起こしている可能性がありますので見逃さないようにしましょう。

脱水症のサイン

□手が冷たい
□口の中が乾く、唾液が出ない
□舌の赤身が強い
□わきの下が乾いている
□頭痛や筋肉痛など体のどこかが痛い
□微熱が続く
 

脱水症かも?と思ったらチェック!

 脱水症の疑いがある場合は、下記の行為を試してみてください。
 当てはまる場合は脱水症の可能性がありますので、すぐに対処をしましょう。

脱水症かどうかのチェック

□親指の爪を押して、2秒以内に赤みが引かない
□腕の皮膚をつねって、3秒以内に皮膚が戻らない
□脈拍を測り、120回/分以上である

水分補給だけではダメ!?脱水症の対処法とは

激しい発汗や嘔吐、下痢などで水分と電解質(塩分)が大量に失われ脱水状態になっているときに、電解質がほとんど入っていない水やお茶などを飲むと、体液成分が薄くなってしまいます。
そうなると、体液成分のバランスを保つため排尿がうながされて、水分と一緒に電解質も排出されてしまい、脱水状態が改善されません。
脱水症が起こったときは、下記の対処法を試してみてください。
 

対処法は水分と電解質(塩分)を補給!

  • スポーツドリンクや経口補水液を飲む
  • 水や麦茶の場合は、塩や梅干しを入れる

注意!
緑茶やウーロン茶には利尿作用のあるカフェインが含まれています。脱水状態のときにはカフェインが含まれていない飲み物を飲みましょう。

高齢者の脱水症状の例

実際に脱水状態になった高齢者の対処をするときは焦ってしまいますよね。いざ直面したときに落ち着いて対応できるように、一例として、脱水状態になったおじいさんのエピソードをご紹介します。このエピソードでは、おじいさんは重度の脱水状態になっていたため、緊急搬送されました。重度の脱水状態にならないために、日ごろの予防が大切であることを感じていただけたら幸いです。

節約のためクーラーを使用せずに過ごしていたら、脱水状態で倒れてしまったおじいさん

訪問介護で働いていたときのこと。ある日、ヘルパーさんから電話がありました。
「○○さんの家の鍵が閉まっています」
その利用者さんは一人暮らしでした。
唯一の家族であるお姉さんは他県に住んでいるため、隣の家の民生委員さんに合い鍵を渡していました。民生委員さんとケアマネさんと連携して、鍵を開けてもらい、ヘルパーさんに中に入ってもらうと…
部屋で倒れている利用者さんの姿が!
意識はもうろうとしており、危険な状態でした。急いでヘルパーさんとケアマネさんと連携して、緊急搬送をしました。
あとになって利用者さんに話を聞くと、医師から「脱水状態になっていた」と聞かされたそうです。その利用者さんは生活保護で電気代を節約していたため、6月の暑い日でもクーラーをつけていませんでした。
利用者さんの意思を尊重することも大事ですが、介護の知識がある私たちは命を守るための促しをすることも必要だなとわかりました。
利用者さんは、その出来事以来、クーラーをつけるようになりました。ヘルパーさんの促しにより、ペットボトルよりは安い麦茶のパックとスポーツドリンクの粉を買って、飲み物を作り、脱水症の予防をしています。

高齢者も自分自身も脱水症対策を!

脱水症は重症になると、命にも関わります。
脱水症を起こしやすく、自覚しづらい高齢者のために、周りの人が気を配ってあげましょう。自分自身の体調も十分に気をつけてくださいね。
今からしっかりと脱水症の対策をして、暑い夏を乗り越えましょう!

参考サイト
公益財団法人 日本訪問看護財団「防ごう!! 守ろう!!高齢者の脱水」(2017年5月25日,http://www.jvnf.or.jp/top/dassui.pdf)
いしゃまち「水分不足に要注意!脱水症の初期症状と予防方法」(2017年5月25日,https://www.ishamachi.com/?p=8113)

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