インタビュー

【インタビュー】「介護職員のケアがなにより大切」 NPO法人みらいびと代表 福島見容

介護の現場は「多職種協働」。チームでケアする仕事だからこそ、チームワークは大切です。では、どうすればよいケアを、よいチームをつくることができるのでしょうか。

今回は、ケアラーズメンター養成をはじめ、介護福祉における人財の定着と育成などのコンサルティングを行っている、NPO法人みらいびと代表の福島見容(ふくしまみよ)さんにお話をお伺いしました。

「もっと職員が働きやすい職場にしたい」「もっと良い介護を提供できるチームにしたい」などと考えてる方におすすめの内容です。

【プロフィール】
NPO法人みらいびと 代表理事 福島見容(Miyo Fukushima)
2004年より人材研修会社のコンサルタントとして企業研修の講師や教育プログラム開発を担当。2009年に法人向け人材育成コンサルティング・企業研修事業を行う株式会社ビーインテグラルを立ち上げ。夫が介護業界で仕事を始めたことをきっかけに、これまであまり縁のなかった介護福祉の世界に強い興味を持ちました。ソーシャルビジネスグランプリ2014大賞受賞(テーマ:介護現場から学ぶ、生き方働き方の原点回帰)。2014年7月に特定非営利活動法人みらいびと設立。

いいケアは、いいチームから生まれる

―――介護において、なぜ「ケアする人のケア」は必要なのでしょうか?

介護の仕事ならでは特性をもっているからです。例えば、人を相手にする他の代表的なサービス業の「キャビンアテンダント」は、搭乗者さんとの出会いはフライトの一回きり。だから、フライトが終われば利用者との関係は終わることになります。

それに対して介護の場合(とくに施設)は、利用者さんに寄り添い続けサービスを提供していきます。サービスの利用者と長期的な関係性をもつ特性があるのです。

加えて、介護の仕事では利用者さんからの「ありがとう」と言われる瞬間があったり、ときには人が亡くなってしまう悲しさもあるなど、介護職員の感情の振れ幅が大きくことが特徴です。

ですから、ストレスの解消や発散、ガス抜きなど、ケアする側の職員のケアもしっかりと行ってあげることが大切なのです。

根本的な解決のためには、介護職員のケアを

また、介護はチームワークが求められる仕事ですよね。

介護の仕事は、職場で良い人間関係が形成されていないと、利用者さんに良いケアを提供することはできませんよね。「いいケア=いいチーム」の図式が成り立つわけです。

だからこそ、職員同士でケアしたり、例えば夫や妻からのケアしたり、施設長からのケア、職場外からのケアが必要です。みんながチームワークの視点をもてばできることなのですよ。近所のおっちゃんでもいいんです。

根本的な解決のために、介護してる人もケアしていかなくちゃ。

介護の現場ではひとりひとりでお互いのケアを視点をもつこと、すなわち「チームワーク」がより求められるのです。

原点に立ち返られること

―――働きがいを感じられずに退職するケースがありますが、「ずっとこの施設で働きたい!」と思われる職場になるために必要なことは何でしょうか
介護職員が辞める理由については、一番多い妊娠出産以外では、法人理念のギャップ、人間関係などがありますよね。

では、どうやったら介護職員が定着できるか、離職を防ぐことができるかというと、それは「立ち返れる機会を設けること」。

介護の世界で働く人たちは、「なにか貢献したい」と思った人が働いています。人間がいざ働こうと思ったときに「福祉だ!」という発想をもつことって多くないですから。

なので、介護職の方がその原点に立ち返られること。

職員同士で介護観を共有するなどして、原点の想いに立ち返れること。日常のつらいことがあっても、原点の想いに立ち返られることが必要です。

…とはいえ「ケアする人のケア」、つまり「みんなのケア」が必要という話に帰結するんですね。

共感されるだけで人は救われる

あとは楽しさみたいなものがあればいいなと思います。
私はよく「楽しい」という言葉を使います。でも、私がつかう「楽しい」は、「おもしろおかしい」の意味ではないんです。
私の楽しいっていうのは、介護の仕事をしているときに感じる「自分のこころのつかってない部分をつかうときが楽しい!」という感覚です。だって、人の命に寄り添う仕事で、普段の日常生活では動くことがない感情が動くんですよ。そんな感覚を楽しんでいるのかなぁ。

仕事の際、ときには「ゲ~」と思うことだってあるでしょう。そういったときは、無理してポジティブに捉える必要はなく、「ゲ~」って吐き出せばいいんですよ笑。
そして、それを聞いた仲間は、そんな想いを共感すること。それだけでも、だいぶストレスを解消することができますから。

ケアする人のケアを実現させるには、コミュニケーションを職場全体で上げていく取り組みがいるのです。

介護は人間のぜんぶが入っている仕事

そんな大変な介護の仕事ですけど、介護って人間のぜんぶが入っている仕事だと思うんです。愛情も悲しみも入っているのだと思うんです。プラスの感情とマイナスの感情とたくさん巡り合う仕事で、且つ専門性が求められる緊張感のある仕事だから、ケアする人のケアが大切なのです。

介護という仕事には尊さと人間成長があります。私がこの介護の仕事をやりたいと思った理由はそこにあるんですよ!

リーダー、マネージャーが気を付けるべきこと

―――お話を伺っていると、施設のトップがリードしていく必要性を感じます。とくに気を付けるべき点はなんでしょうか?

「介護の仕事はこうだ」「介護報酬が下がったからこれしかできない」っていう思い込みでしょうか。
あとは現場のスタッフを信じているかどうか、人は変われるかを信じているかどうかです。

ケアする人のケアが可能な環境をつくりあげていく過程では、マネジメント層やリーダーが仕事に対して本気で尊さを自分で感じて、職員に伝えられるかどうかが重要です。ちゃんと現状がわかって、意欲があって、伝えるスキルがあるかどうかです。

マネジメント層の役割は、職員が目標を達成できるよう、いかにマネジメントするかですから。

研修などでお会いする現場の中堅リーダー層の方からは「上が現場を理解していない」「上が介護者の気持ちを分かってくれない」といった声をよく聞きます。現場と上層部の思いや意識のズレが生じている職場も少なくないようです。

このような職場では、相互理解のためにコミュニケーションによって互いに歩み寄るしかないのですが、現場の方々に向けて私がよくお伝えするのは、「上が変わるのを待つのと、自分が変わるのと、どちらか早いか?」ということです。

これからはますます現場の発信力が求められてくると思います。もし納得のいかないこと、改善したいことがあるのなら、現場から声を上げて行くことが必要だと思います。できない理由ではなく、どうやったらできるようになるのかを考えられることが、「ケアの専門性」のひとつではないでしょうか。

NPO法人みらいびとでは、これからも「現場発イノベーション」の一助となれるよう、定着支援と人材育成の分野で微力ながら活動して行きたいと思っています。

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